今回から、奥武鉄道の時刻表から一風変わった列車を集めて何のために走っているの?何でこんな列車があるの?というようなことを掘り下げてみる。さあ、変わりもの列車で、出発進行!
■短距離列車の筆頭格?中山道線 新宿発椎名町行き各駅停車(新宿発中板橋行き各駅停車も)
中山道線の各駅停車列車は日中は全列車が浦和または上尾まで、朝夕もほとんどの列車が浦和、上尾、関宿方面まで運転される。列車の出庫、入庫が行われる早朝深夜にのみ板橋車庫前発着の列車があるが、実は新宿~板橋車庫前間よりさらに短い運転区間を持つ列車がわずかに存在するのを御存じだろうか。9時01分新宿発椎名町行き各駅停車21091C列車というのがそれである。そもそも椎名町駅には車庫も折り返し用のポイントもなく、なぜ椎名町行きなのか首をひねるところだが、この列車が椎名町駅から先どうなるかをダイヤグラムで見てみると椎名町で止めなければいけない?理由が見えてくる。
9時01分新宿発の21091C列車は新宿駅から椎名町駅まで先行して走り9時07分に椎名町に到着するが、ここで新宿駅を9時05分に出た8091M区間急行鴻巣行きが背後から迫って来るため椎名町でこの列車の待避を行う。8091Mが通過するとその2分30秒後には8091Mが小滝橋で追い抜いた浦和行き各駅停車1091C列車が椎名町に到着するため、各駅停車が各駅停車に追いつかれるということにならないためには21091C列車は8091M通過直後、1091C到着前に椎名町を出なければならない。しかし、8091Mは椎名町の次の要町で新宿8時56分発22085C板橋車庫前行き各駅停車を待避させており、8091C列車自身も要町に停車するため、21091C列車が8091C通過直後に椎名町を出ても次の要町に入線することができないのである。そこで21091C列車は椎名町で9時07分から9時15分まで副本線に停車し、後続の各駅停車である1091C列車と、さらにその後に通過してくる9時10分新宿発の7091M急行宇都宮行きを待避するのだ。つまり、21091Cは椎名町で8091Mを待避した後発車するに発車できないまま後続の各駅停車にも追い抜かれてしまうため、各駅停車同士の列車発車順序で混乱が生じるのを避けるために21091Cを椎名町で営業終了として椎名町から板橋車庫前までは回送扱いで送っているのである。
ちなみに、9時前後の新宿駅の時刻表を見ると8時53分に3085C各駅停車上尾行き、8時55分に4085C直達準急関宿行きが出ると、その後は8時56分に22085C各駅停車板橋車庫前行き、8時59分に特急しらかわ5号、9時00分に回送列車の回8075Mと続き9時01分に曰くつきの21091C各駅停車椎名町行き、そして9時03分発の1091C各駅停車浦和行きが発車する。新宿駅の緩行列車ホームで板橋車庫前行き、椎名町行きと2本連続で短距離各駅停車が続くとその先の準急通過駅に行くには相当待たなければいけないような気になるが、実は新宿から前野、中台に行こうとしたとしても8時55分直達準急(椎名町で先行する3085C各駅停車を通過待避させ、要町で3085Cに乗り換え可能)の次が9時03分で8分間しか空かないため大した待ち時間ではないのだ。
冒頭に短距離列車の筆頭格?と書いたが、新宿から椎名町までは営業キロで4.0km。埼京線の新宿発池袋行き列車(4.8km)よりも短い営業区間であり、奥武鉄道の最短距離列車か?と思いきや大子線の七合~馬頭間(3.4km)区間列車の短さにはかなわなかった。