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今回も奥武鉄道の時刻表から一風変わった列車を取り上げていきます。さあ、変わり者列車で、出発進行!

タダで特急電車に乗れる!?1日1往復のみ運転される10000系使用の普通列車

JR線ではかつて特急電車の間合い運用で普通列車に使用されるなんていうことが頻繁にあった。高崎線や東海道本線では185系の特急送り込み運用で普通列車に使用されるものがあったし、そもそも185系特急形電車そのものが特急列車と普通列車双方での使用を前提に設計された車両だ。

奥武鉄道では車両のヒエラルキーがはっきりと分けられており、現代の私鉄の中では珍しく車両の汎用性には欠けると言わなければならない(かつて起動加速度と最高速度がトレードオフの関係にあった時代には阪神、京急、小田急など優良列車以外の一般形車両にも優等列車用と各駅停車用とで設計を分けている私鉄が多かったが、電動機の技術向上によって高加速度、高速度をある程度同時に実現できるようになり、車両の汎用化が進んだ)。気動車や機関車、客車を別にしても電車だけで特急形電車、快速形電車、急行形電車、一般形電車、通勤形電車と分類されており、通勤形電車は他に類を見ない起動加速度の速さを誇り、急行形電車と一般形電車の間でも使用線区の違いによりドアの数や内装、最高速度に差がつけられている。特急形電車についてはいわんやをや、内装の差から特急形電車が特急以外に使用されることは絶対にない…と思ったら、実は例外があるのだ。たった1往復。今回はそのお話。

奥武鉄道の時刻表では種別ごとに色分けはされているものの車種で色分けされているわけではないので、車種を見るには運行番号末尾のアルファベットを確認する必要がある。運行番号末尾がDは気動車。気動車で3、6、12両編成ならキハ4000系だし奥武本線や大子線、大田原線で2両ならキハ200形、白河より先の会津支社、南会津支社管内で2両ならキハ100形だ…と言いたいところなのだが2018年秋にキハ300/350形がデビューしたことで大子線の3両編成の中にはキハ4000系とキハ300/350形が混在するようになっており分かりづらくなっている(そのため時刻表ではキハ300/350形であることを特記している)。話が逸れたが、そういう目で磐岩線の時刻表を見ていると他の全ての普通列車が気動車で運転される中で誤植か??と見紛うのが早朝5時ちょうどに会津若松を出る804E普通三代行きと、その折り返しである807E普通三代発会津若松行きだ。これらは列車番号末尾にEとあることから分かるように、特急形の10000系電車7連で運転される。こんな早朝に特急形電車が普通列車として走ると考えると不思議だが、朝5時に会津若松を出る804Eはともかく7時前に会津若松に帰って来る807Eは三代~会津若松間の各駅から上り白虎2号への接続列車としての意味合いも持っており(特急白虎は会津湊に停車しないため、三代~会津若松間の各駅からは一旦会津若松に戻って乗車することになる)、上り特急白虎を利用する"上客"へのおもてなしとしての位置づけがあるようだ、といっては勘ぐり過ぎか?

ちなみにこの2E列車白虎2号、6時47分に会津若松を出て新宿到着は9時45分。先行する朝一番の特急、あかべこ2号よりも会津地区からの利用は多いようで、喜多方~会津若松間の普通列車のみから接続を受けるあかべこ2号と異なり三代~会津若松間および熱塩温泉~会津若松間と、比較的広範囲から来る普通列車の接続を受けて会津若松を発車する。肝心の接続時間は三代発会津若松行き(807E)からも熱塩温泉発会津若松行き(812D)からもわずか2分。発着番線はというと2Eが駅舎側1番線、812Dが切り欠きホームの0番線、807Eは階段を渡った2番線だから、おもてなしなどと書いてしまったが807Eから2Eへの乗り換えは結構大変だ。

さて、今回取り上げた10000系普通列車がなぜ有名かというと、夜明けの静潟駅に停車する10000系電車の写真が10000系デビュー当初宣材に用いられたかららしい。真夏の日の出直前、オレンジ色に輝きだした東の空を背に湖畔に停車する特急形電車。いかにも絵になる情景だが、日の出前では当然走り去る特急列車を止めて撮ることは難しく、静潟に停まってくれる804E列車のみで撮影できる情景だ。まさか奥武鉄道が被写体にするためにと普通列車に1往復だけ特急形車両を入れているのではないだろうが…?

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磐岩線と岩羽線のダイヤグラムより。普通列車が軒並み「D」で気動車運用である中で、会津若松~三代間を早朝に往復する804E→807Eだけが異質だ。郡若線(浜路~三代)や岩羽線(会津若松から喜多方、熱塩方面)は非電化であるため、10000系電車による運転区間は電化されている磐岩線内に限られ、807Eの終点会津若松では熱塩温泉方面に向かうのに809D気動車列車への乗り換えをも余儀なくされる。

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奥武線 鉄道小噺 第16回   変わりもの列車で行こう!その④

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